「『花まつり』を広めたい」小籔千豊さんの思いと「一切皆苦」
2019年3月6日にNHKの「持論独論」という番組に芸人の小籔千豊さんが出演し、お釈迦様の誕生日である「花まつり」について語っていました。
小籔さんは同じ芸人仲間の笑い飯・哲夫さんの書いた仏教の本を読んでから仏教を好きになり、それから仏教を広めようと色々されているそうで、今回の「持論独論」で語っていたこともその活動の一つです。
その内容について少し解説したいと思います。
4月8日は何の日?
4月8日はお釈迦様の誕生日で「花まつり」と呼ばれ、お釈迦様が誕生された時のご様子をかたどった「誕生仏」の仏像に甘茶をかけて祝う催し物が各地のお寺で執り行われます。
ですが、小籔さんは「持論独論」の中で
バレンタイン、ハロウィーン、クリスマスは盛り上がりますが、4月8日の花まつりはあまり盛り上がらない。
日本にはお寺がたくさんあり、日常会話の中でも仏教から来た言葉をよく使ったり、お葬式にはお坊さんを呼ぶのに花まつりを知っている人が少ない。
と花まつりが浸透していないことを残念に感じており、花まつりを知ってほしいとの思いから2年前からクラブイベントをしています。
クラブのステージで小籔さんが「一切皆苦!」と叫ぶと、ファンの皆さんもよくわからないけど「いっさいかいく!」と叫ぶ。
そこで「一切皆苦」という言葉を知って、後でネットか何かで調べてくれたら嬉しいと言っていました。
「一切皆苦」とは
「一切皆苦」とは「すべての人は皆苦しんでいる」という意味です。
お釈迦様はこの世の苦しみを四苦八苦と教えられています。
四苦とは4つの苦しみのことです。
- 生苦(しょうく)…生きてゆく苦しみ
- 老苦(ろうく)…肉体が古びていく苦しみ
- 病苦(びょうく)…病の苦しみ
- 死苦(しく)…必ず死んでいかねばならない苦しみ
これに次の4つの苦しみを合わせて八苦と言います。
- 愛別離苦(あいべつりく)…愛するものと別離する苦しみ
- 怨憎会苦(おんぞうえく)…怨み憎むものと会わねばならぬ苦しみ
- 求不得苦(ぐふとっく)…求めているものが得られない苦しみ
- 五陰盛苦(ごおんじょうく)…五陰とは肉体のこと。肉体あるがゆえの苦しみ
生きている間はこれらの苦しみから逃れることはできません。
今大きな苦しみがなくても、今後ずっと苦しみが来ないわけではありません。
「あの人は気楽に生きていていいなあ。きっと苦しみなんてないんだろうな」と思う人でも聞いて見ると「とんでもない。私は今こういうことで悩んでいるんです」と答えるでしょう。
苦しみのない人なんてどこにもいないので、お釈迦様は「一切皆苦」と教えられたのです。
ではお釈迦様は「すべての人は苦しんでいる」ということだけ伝えていかれたのでしょうか。
そうではありません。
「すべての人は苦しんでいる。それはなぜか。苦しみの真の原因はここにある。だからその苦しみの真因を取り除くことで苦しみから脱することができる。その方法を教えよう」
と苦しみをなくして、幸せになる道を説かれたのが仏教です。
四苦八苦についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
天上天下唯我独尊とは?
小籔さんが花まつりの日にクラブイベントをしているのは
各家庭やカップルが外食したり、プレゼント交換したり、企業やマスコミが4月8日を取り上げて、4月8日が日本に定着知られるようになったらいい
と思ってのことだそうです。
番組の最後には
「天上天下唯我独尊という、自分と他人を尊重し合う素敵な言葉を噛み締める、素敵な日が日本に定着すればいいと思っています」
と締めくくっていました。
「天上天下唯我独尊」とはどのように「自分と他人を尊重し合う素敵な言葉」なのでしょうか。
「天上天下唯我独尊」とはお釈迦様が生まれられた時に、「天上天下唯我独尊」と仰ったというエピソードがある言葉です。
意味は「天上天下」でこの世界すべてを表します。
「唯我独尊」とは一般的には「ただ自分一人が偉い」という意味だとされ、傍若無人な人を「あの人は唯我独尊な人だ」と批判することもありますが、正しい意味はそうではなく、「ただ、私たち人間だけが果たすことのできる尊い目的があるのだよ」という言葉です。
すべての人に尊い目的、使命があるから、いらない人なんていない、無価値な人もいない。自分に価値があるように、他人にも価値があるという小籔さんの言う通り、自分も他人も尊重する言葉です。
「天上天下唯我独尊」についてはこちらの記事でも紹介しています。
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