お釈迦様物語
その中のいくつかをご紹介します。
お釈迦様ご在世のとき、孤児となった少女サーヤは給孤独長者(ぎっこどくちょうじゃ)の屋敷に引き取られて働いていた。赤ん坊の世話と食器洗いが彼女の仕事である。 ある日、温かく抱き締めてくれる母がもうこの世…続きを読む
仏教には不飲酒戒(ふおんじゅかい)と言われる、お酒を飲んではいけないルールがあります。 殺生してはならないとか、嘘をついてはならないなどはわかりやすいですが、なぜお酒を飲んではいけないのでしょうか。 …続きを読む
35歳の12月8日に、大宇宙最高のさとりを開かれたお釈迦様は、波羅奈国の鹿野苑で、仏として初めての説法(初転法輪)をなされた。その後、仏陀の教化によって数十人が出家した。その仏弟子たちにお釈迦様はこう…続きを読む
足が棒になって動かない。身重の体は、疲れで鈍く火照っている。 朝から当てもなくさまよって、この大きな橋にたどり着いた。日はもう中天にある。陽光にきらめく川面をぼんやり眺めながら、女はここ数日の出来事を…続きを読む
夕食の支度をしながら女は、朝の夫婦ゲンカが忘れられないでいた。 夫は何かあると、すぐに彼女を罵倒する。今日も過って食器を壊したのを悪し様に言われたので、彼女はヤケを起こし、一日じゅう家事もせずに過ごし…続きを読む
背中から西日が照りつける。行く手に伸びる影を見つめながら、粗末な法衣の修行者は帰路を急いでいた。 手元の鉄鉢の穀物が、歩みに合わせてサラサラと鳴る。今日の乞食で受けることができた布施はわずかだが、一日…続きを読む
その修行者がお釈迦様の元に来た時のことを、阿難はよく覚えている。 目を険しくいからせた男は、真摯に求道の指針を仰ぐ弟子たちとは雰囲気が違う。無為な議論のために来たことが、だれの目にも明ら…続きを読む
「ごめんなさい。ごめんなさい」 修羅のような兄の剣幕に、ひざがガクガクして頭の中が真っ白になる。シュリハンドクは目をつぶり、手を合わせて必死にわびた。 「おまえがヘマをするせいで、オレの修行は一向に進…続きを読む
精舎(しょうじゃ)では善男善女が肩を並べ、真剣にお釈迦様の説法を聴聞(ちょうもん)していた。 瞬きさえ惜しむような張り詰めた空気の中で、仏弟子アナリツは不意に襲った睡魔と闘っている。不摂生をした覚えは…続きを読む
「昔、ある金持ちの男が三人の妻を持って楽しんでいた」 感動を手繰り寄せるように、目を閉じて語る修行者の声だけが響く。それはかつて仏陀・お釈迦様から聞いたという例え話だった。 商売人に出家…続きを読む
寝息が耳につく。女は寝返りを打ち、夫に背を向けた。何も知らずに眠る、彼の暢気がしゃくに触る。 この数日、まぶたは閉じることを忘れたようだ。眠りたいと願うほどに目はますます冴える。まんじりともせず、白ん…続きを読む
暁の光が辺りを照らし始めた。徐々に明けていく気配をまぶたに感じながら、女は夜具に横たわっている。 給孤独長者(ぎっこどくちょうじゃ)の家は朝が早い。 すでに起きだした家人が、屋敷のあちこちで元気に挨拶…続きを読む
愚かな男はだれか 招き入れられた豪華な部屋で修行者は、横たわる老人を一目見て絶句した。 それは出家前に仕えていた商家の主人だった。かつての精悍さは失われて骨と皮だけになり、末期が近いのは明らかである。…続きを読む
雪山童子と羅刹 これは遠い昔、雪山の奥深くに、菩提(本当の幸せ)を求めて難行苦行されていた過去世のお釈迦様、雪山童子の物語である。 「人の世の苦しみ、悲しみはどこから来るのか。人は、何のために生きるの…続きを読む
当てもなく行き着いた小さな湖畔。澄んだ水面に目を休め、しばし佇んでいた悉達多(しったるだ:後のお釈迦様)は、焦りの心と対峙していた。 大覚(仏のさとり)を求め、故郷のカピラ城を捨てて数年…続きを読む
これは大号というお釈迦様の弟子が、商人であったころの話である。 金色の太陽が半ば沈むと、急に青暗く、寒々した空気に包まれた。 他国からの帰途、彼は道に迷っている。 幾度か往来したはずなの…続きを読む
遠くからも目立つその屋敷は、周りの貧しい家々の中に、ひときわ重厚な門構えを見せている。 修行者がこの家の少女と出会ったのは、ある暑い日の行乞の途中。 あまりにのどが渇き、水を一杯所望しようと訪れたのだ…続きを読む
ひとしきりぐずって眠りについたわが子を、キサーゴータミーは静かに寝台に戻した。 苦しいのか胸がせわしなく上下する。口を半開きにし、汗を浮かべて喘ぐ寝顔もあどけなく、彼女は息子をじっと眺めた。 いとおし…続きを読む
気を抜いて歩けばつまずきそうになる絨緞が、廊下のはるか先まで続いている。 昼間だというのに、きらびやかな照明が明々と灯り、ぜいたくな調度が惜しげもなく置かれる城中。 かつて王族の一員であったから気後れ…続きを読む
お釈迦様物語 すべての人は平等なり 仏弟子・阿難の物語 きつい日差しが照り返して、足元からは熱気が立ち昇る。 汗ばむ額を手で拭いながらも、阿難(あなん)の心は浮足立っている。 ついさっき、托鉢(たくは…続きを読む