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お釈迦様物語 愚かな男はだれか お金・時間の天引きの勧め

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カテゴリー:お釈迦様物語 タグ: 更新日:2018/10/05
 

愚かな男はだれか お金・時間の天引きの勧め

愚かな男はだれか

招き入れられた豪華な部屋で修行者は、横たわる老人を一目見て絶句した。
それは出家前に仕えていた商家の主人だった。かつての精悍さは失われて骨と皮だけになり、末期が近いのは明らかである。口を真一文字に結び、時折大きく息を吐く。眼窩に沈んだ眸は、じっと天井を見つめていた。

傍らに彼の長男が、よく似た顔に思案の表情を張りつけて座っている。
息子が仏弟子の来訪に気づいて一礼すると、翁は顔だけを出家に向けた。
震える手でこちらへ来いと招く。挨拶もそこそこに修行者は、寝台の横にひざまずき、口を老人の耳元に近づけた。
 
「お久しぶりです」
「立派になったのぉ。元気にしとるかい?」
 
搾り出すように老人は言った。
「ハイ。だんなさん、具合はいかがですか?」
「ああ、ありがとう。わしはもう長くないよ。それより今日来てもらったのはほかでもない。あの時の話を聞かせてくれないか」
 
“あの時の話……?”
 
戸惑いを察したのか、老店主は言葉を継ぐ。
「ほら、そなたがここを出て行ってから、初めて訪ねてくれた時のことじゃ。本当に短かったが、その時してくれた話じゃよ」
 
言われてようやく思い出した。
以前、一言なりと仏陀の教えを伝えたいと、用事のついでに訪問したのだった。
翁の懇切な商いが繁盛し始めたころで、屋敷にはその勢いを表す調度がいくつも置かれていた。
思い返して今、通された部屋を眺めると、さらに立派になっている。だが主の命は風前の灯。出家は人生の悲哀を感じた。
ひとつ解き放たれると、あとは数珠つなぎで記憶がほぐれていった。
仏弟子が店主にした話も、お釈迦様からお聞きしたこんな例え話だったと、一言一句までもが思い出された。

愚かな男はだれか お金・時間の天引きの勧め

愚かな男が大勢の客を招いてご馳走しようとした。“さて何を出そうか”。いろいろと考えた末、家に乳牛が一頭いたので、牛乳でもてなそうと決めた。
しかし、一頭の牛ではとても大勢をもてなすことはできない。
さればといって、あらかじめ乳を搾ってためておけば腐ってしまう。思案した結果、
「そうだ、牛の腹に蓄えておけば腐る心配はなかろう。これは名案だ」
独り合点して、その日から乳を搾らずに招待の日を待っていた。
やがて当日、大勢のお客がやって来た。男は牛小屋へ行き、蓄えていたはずの乳を一挙に搾ろうと一生懸命になったが、牛の腹はもはや萎んでしまい、乳は一滴も出なかった。
客たちは腹が空いてもご馳走が出ないので騒ぎだした。男が一切を打ち明けると、怒るやら、あざけるやらして帰っていったという。

このような話をなされてから仏陀は仰せられた。

 
「布施を行おうとする者で、“今にお金がたまり、余裕ができたら大いに施そう”と言っているのをしばしば聞くが、それはちょうどこの男の話と一緒で、布施など到底できるものではない。
金も財産もできぬうちに、盗賊に奪われたり、災厄に遭ったりと、ついには思いを果たさず死んでしまうのである。善いことは思い立った時に行うがよい」

 

双眸を見開いて聴き入っていた店主は、息子に向かって言った。
 
「仏陀の大事な教えを、あの日、感じ入って聞いたものだ。しかし好転していた商売を抱えて、“そうはいっても、今は商いが大事だ。仏法は、仕事をやめてからでいい”と思ったのだ。
だが息子よ。見てのとおり暮らしはよくなったが、わしはこの有り様じゃ。今になって、愚かな男は自分だったと気づいたのだ。なぜもっと早く仏法とご縁を結ばなかったのか。今はそればかりが悔やまれる。せめて命ある間に聞かせてもらうしかない。
おまえも仏の教えを聞いて、なぜわしが後悔しているのか、自分で答えを見いだすのだ。……ああ、人の一生とは何と速いものだ。おまえに望むことはほかにない。どうか、すぐ仏法を聞いてくれ」

 
懸命な父の言葉に思うところがあったのか、向き直った息子は合掌し、深々と修行者に頭を下げた。出家はおもむろに法を説き始めた。

愚かな男はだれか お金・時間の天引きの勧め

お金・時間の天引きの勧め

貯蓄のコツは「天引き」といわれます。日本の納税率が高いのは、天引きされるからで、余ったお金を貯蓄しようと思っても、なかなか思ったような貯蓄はできません。最初から貯蓄する額を天引きし、残りのお金で生活してこそ、貯蓄はできるものです。
この考えは、お金だけでなく、時間にも通じます。
新しく何かを始めようと思っても、忙しくて後回しにすると、貯蓄ができないように、三日坊主に終わってしまいます。
貯蓄の天引きのように、「時間ができたらやろう」ではなく、最初のこの時間にやろうと、時間を天引きして、残りの時間で、今までのことをやり終えるようにする。そうしてこそ、新しいことにチャレンジできるのではないでしょうか。
昔から「善は急げ」と言われます。お釈迦様は、そのようなことを勧めておられるのです。

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あさだ よしあき

ブログ作成のお手伝いをしています「あさだよしあき」です。 東京大学在学中、稲盛和夫さんの本をきっかけに、仏教を学ぶようになりました。 20年以上学んできたことを、年間200回以上、仏教講座でわかりやすく伝えています。
 
   

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