浄土真宗の葬式・法事とは
誰かが亡くなると必ずなされるのが葬式・法事です。
葬式を立派にすると死んだ人が浮かばれるとか、法事は何周忌まではしたほうがよいとか言われますが、葬式・法事は死んだ人のために行うものなのでしょうか。
今回は浄土真宗での葬式・法事の意義について解説します。
(質問):浄土真宗で、葬式・法事には、どういう意義があるでしょうか
(解答)
昔から、親を亡くして初めて知る親の恩といわれますように、親が生きている間は、なかなか子供には、親の恩が分からないものです。
生きている時にもっと親孝行しておけばよかったという気持ちは、真面目な人でしたら必ずといっていいほど、起きるのではないでしょうか。
妻に先立たれた夫、夫を亡くした妻、子供を失った親、世に深い悲しみに落ち込んでいる方は少なくありません。
こんなことならああしておけばよかった、こうしておけばよかったと亡くしてから後悔します。
さればといって、墓にふとんもかけられず、遺骨にご馳走を食べさせられもせず、どうしたらこの心が落ち着くことかと苦しむ心が起きてきます。
それで、立派な葬式や法事を勤めることで、やり切れぬ気持ちを静めるほかはないと考え、「お経を読んでもらうだけが、死人のご馳走だ」という人もあります。
亡くなった人のために葬式や法事を行い、葬式や法事での読経が亡くなった人のためになると思われていますが、そうではないんですよと教えられた方が、仏教を説かれたお釈迦さまです。
あるとき、お釈迦さまに一人の弟子が「死人のまわりで有り難い経文を唱えると、死人が善いところへ生まれ変わるという人がありますが、本当でしょうか」と尋ねました。
そのとき、お釈迦さまは黙って小石を一個拾われて、近くの池に投げられました。
水面に輪を描いて沈んでいった石をお釈迦さまは指さされて、こう反問されています。
「あの池のまわりを、石よ浮いてこい、浮いてこいと唱えながら回れば、石は浮いてくるであろうか」
石は、それ自身の重さで沈んでいったのだ。人間もまた、自業自得によって死後の果報が決まるのだ。経文を読んで死人の果報が変わるはずがないではないか。
葬式や法事のときに行う読経や儀式で死者が救われるという考えは、もともと仏教にはなかったのです。
では読まれているお経は、どのようにしてできたのでしょうか。
(関連)
お釈迦さまの説かれた「お経」「経典」「仏典」とは
お釈迦さまの説かれたお経も、親鸞聖人の書かれた『正信偈』も、蓮如上人の『御文章』も、みな生きている人のために書かれたものであって、死人のために書かれたものは、一つもありません。
生きている人を本当の幸せに導くために書き残されました。
葬式・法事の真の意義
では、葬式や法事や読経は、全く無意味なことかといいますと、それは勤める人の心がけによると教えられています。
私たちが亡くなった人を偲ぶとき、「亡くなった人が最も喜ぶことは何か、最も望んでいることは何か」をよく考えることが第一です。
いろいろことが思い浮かぶでしょうが、煎じ詰めると私に「幸せになってもらいたい」ではないでしょうか。
このことを思いますと、私たちが本当の幸せになることが、亡くなった人の喜ぶことであり、恩返しにもなるのです。
厳粛な葬式や法事のときは、あれも忙しい、これも忙しいと、普段、なかなか自分を振り返ることのない人でも、亡くなった人を通して、人はやがて死んでいかねばならないことを目の当たりにし、必ず終わりがくる人生を真面目に考えずにおれなくなります。
お釈迦さまの教えを聞かせていただきますと、人生とは何かを考えさせられ、悲しみがいやされ、本当の幸せになることができます。
葬式や法事では、読経だけでなく、読まれたお経に説かれているお釈迦さまの教えを聞かせていただくことで本当に意味のある葬式、法事となるのです。
まとめ
葬式や法事で行われる読経には、亡くなった人を幸せにする力があるように思われていますが、それを真っ向から否定されたの仏教を説かれたお釈迦様でした。
葬式や法事での読経や儀式は亡くなった人に向けて行われるのではなく、そのとき集まった生きている私たちのために行うものです。
普段は忙しい毎日を過ごしている中でも、厳粛な葬式や法事の縁に触れることで、やがて必ず自分の身にも訪れる死を思い、人生を真面目に考えずにおれなくなります。
人生でなすべきことは何か、後悔のない人生を過ごすにはどうすればいいかを教えられたのが仏教です。
葬式や法事はただの読経と儀式で終わらず、遺された私がどうすれば本当の幸せになれるかを、仏教を聞いて学びましょう。
仏教では私たちの人生の目的について「天上天下 唯我独尊」と教えられています。
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