三蔵法師は人の名前ではない? 三蔵法師とは実はたくさんいるんです
西遊記でおなじみの三蔵法師。
三蔵という名前のお坊さんだと思っている方も多いですが、「三蔵」は人の名前ではありません。
では「三蔵」とはどんな意味で、「三蔵法師」とはどんな人なのでしょうか。
今回は「三蔵法師」について解説します。
(質問):中国の小説『西遊記』に登場する「三蔵法師」は、どんな人か
(解答)
『西遊記』は、中国で16世紀の明の時代に大成した伝奇小説です。
三蔵法師(さんぞうほうし)が、孫悟空(そんごくう)、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)を供に従え、幾多の苦難を乗り越え、天竺(てんじく)へ取経を目指す物語で、全100回で中国四大奇書に数えられています。
ドラマで見たことのある人も多いと思います。
1978年~ 西遊記シリーズ(西遊記・西遊記II) (堺正章主演、夏目雅子等)
2006年~ 西遊記 (香取慎吾主演、深津絵里等)
ドラマの中で「三蔵法師」と呼ばれているので、三蔵法師を人の名前だと思っている人が少なくありません。
実は、三蔵法師は一般名詞であって、人の名前ではありません。
西遊記の三蔵法師のモデルとなったのは玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)という人で、数ある三蔵法師の一人です。
どんな人を三蔵法師と呼ぶのか
では、どんな人を三蔵法師呼ぶのでしょうか。
三蔵とは仏教で、経蔵(きょうぞう)・律蔵(りつぞう)・論蔵(ろんぞう)の三つの蔵のことを言います。
経蔵とは、お釈迦さまが説かれたお経のことです。お経の数は七千巻以上あります。
律蔵とは、お釈迦さまが決められた戒律を言います。
論蔵とは、お経の内容を後世になってからインドの仏教の先生が解説されたものを論といいます。
この三つの蔵を三蔵といい、三蔵法師とはこの三蔵に精通した僧侶のことであり、またお経の翻訳をする僧侶のことをいいます。
三蔵は、当時のインドの言葉で書かれています。インドの言葉から中国の言葉に翻訳されて、お経は漢字で表されるようになりました。この翻訳に活躍した僧侶のことを、三蔵法師といいます。
親鸞聖人の書かれた正信偈(帰命無量寿如来で始まり、浄土真宗のお経と誤解されています)にも、三蔵法師のことが出ています。
三蔵流支授浄教(さんぞうるしじゅじょうきょう) (正信偈)
「三蔵流支が浄教を授けられた」と書き下しますが、この三蔵流支とは菩提流支(ぼだいるし)という名前の三蔵法師のことです。
浄教とは、観無量寿経のことです。三蔵法師の菩提流支が、観無量寿経を授けられたという意味です。
(関連)
浄土真宗で大事なお経は何ですか?
このように三蔵法師はたくさんいるのですが、その中で有名な三蔵法師の一人が、玄奘三蔵です。その玄奘三蔵をモデルに作られた小説が『西遊記』なのです。
これら三蔵法師の活躍によって、インドで説かれた仏教が中国へ、そして、中国から日本へ伝えられました。
まとめ
三蔵法師は人の名前ではなく、三蔵に精通した僧侶のことを言います。
三蔵とは、経蔵、律蔵、論蔵のことで、それぞれお経、戒律、お経を解釈した本のことです。
その三蔵法師の中でも有名な玄奘(げんじょう)という三蔵法師の取経の旅をモデルに作られた話が『西遊記』です。
三蔵法師によって翻訳されたお経にはどんなことが書かれているのでしょうか。
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