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お釈迦様物語 お釈迦様の最初の弟子は誰だったのでしょうか

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カテゴリー:お釈迦様物語 タグ: 更新日:2018/10/05
 

瞑想

お釈迦様物語 お釈迦様の成道と最初の仏弟子

静かな午後。溝陳如(きょうちんにょ)は大樹の下に座を設け、心を静めようと目を閉じた。

ほかの四人は早々に瞑想に入ったらしい。

彼らのかすかな息遣いを感じながら、落ち着こうと呼吸を整えるが、どうにも溝陳如は集中できない。

原因は分かっている。悉達多太子(しったるだたいし)と決別したからだ。

〝太子よ、なぜあれだけの苦行に励んでいたのに、突然、修行を断つようなことを……?〟

頭の中を、さまざまな思いが巡っていた。

数週間前まで彼らは、悉達多太子(後の仏陀、お釈迦様)と行動をともにしていた。
 
溝陳如は、太子の身の回りの世話をせよ、と太子の父・浄飯王(じょうぼんおう)によって遣わされた五人の臣下の一人だ。
故郷のカピラ城を捨て、真理を求めて修行を始められた太子を、父王が心配してのことである。
だが彼らの来訪を、太子は拒絶した。
 
「身の回りの世話などされては、修行にならぬ」

というのだ。そこで彼らは思案の末、
 
「私たちも共に出家し、修行いたします。どうかお許しください」

と申し出、ようやくお側での起居を許可された。
そうして生活をともにするうち、やがて五人は、太子の求道心の気高さに心引かれ始めた。

特に溝陳如は、さとりを求める太子の姿に感動し、自らも心から真理を求めるようになっていった。

修行開始から六年がたとうとしていたある日、肉体を痛めつける激しい修行によって憔悴していた太子が、無言で座を立ちヨロヨロと歩き始めた。

〝一体どうしたのだ?〟

衰弱した太子の身を案じ、溝陳如は後を追う。

向かったのは、近くを流れるニレゼン河であった。

すると太子は何を思ったか、河に身を沈め、水浴びを始めたではないか。

それだけではない。あろうことか、通りかかった女から乳粥の布施を受けたのだ。

溝陳如はわが目を疑う。沐浴も女人との会話も修行者にあるまじき行為。

「悉達多は弱い心に負け、苦行を棄てた。彼は堕落したんだ」

彼の口から太子を非難する言葉が噴き出した。
 
裏切られた思いで、すぐにその場から離れ、太子の元を立ち去る準備を始めた。

これからどうしようなどとは思わなかった。

とにかく堕落した者を遠ざけ、自分だけでも修行を続けよう。

真理を求めるんだ、と四人の仲間を引き連れ、この波羅奈国(はらなこく)鹿野苑(ろくやおん)へやって来たのである。

数日後、自ら決別したとはいえ、さまざまな迷いが胸に去来する。

〝本当にこれでよかったか。何か深い訳でもあったのか……オレの行動は拙速だったのかもしれない……〟

そんな思いが浮かんでは消え、どうにも修行に身が入らないのだった。
「ええい」と目を開けたその時、仲間の一人が叫んだ。
 
「おい、あれは太子ではないか?こちらに向かってくるぞ。あの堕落した悉達多が……」

声に導かれ、指さす方角を眺めると、遠く、ゆっくりと、人影が大きくなってくるのが見えた。

紛れもない。それは、彼らが仕えていた釈迦族の太子・悉達多であった。

「いったい、何をしに来たのだろう……?」

だれともなくつぶやく声に、溝陳如は不安を募らせた。

大樹

どうしてここに現れたのか。

溝陳如の不安は膨らんだ。太子と離れたのは、果たして本当に正しかったのか。抑えていた思いが再び湧き起こる。

〝苦行を捨てる深い訳があったのでは……〟

太子の出城の経緯をよく知るゆえに彼は迷い、六年前を思い出していた。

当時、何も告げずに城を出た太子を捜し求めること幾百里。

ついに出会った時、悉達多は一樹の下で端座瞑想していられた。

沈思する太子に、言葉を尽くして翻意を請うたのは、他ならぬ溝陳如自身である。

ありったけの情に訴えた説得に太子は、だが静かにこう言われた。

 
「お前たちには分からないのか。あの激しい無常の嵐が。まだ分からないのか。

ものは皆、常住しないのだ。いずれの日にか衰え、いずれの日にか滅ぶのだ。

快楽のかげにも無常の響きがこもっているのだ。

美女の奏する絃歌は欲をもって人を惑わす。三界は悩みのみ、猛き火のごとく、幻や水泡のごとし。

若きを愛すれど、やがて老いと病と死のために壊れ去るのだ」

耳に残る熱き信念が今も太子にあるのだろうか。

やはり何か理由があって沐浴し、女から乳粥の布施を受けたのであったか。

だがその本意が分からず、溝陳如の心は大きく揺れている。

「一体、何をしに来たのだ?」

一人つぶやいた仲間の声に、心と裏腹の強い言葉が彼の口を突いた。

「ともかく悉達多は堕落した。あんな者を相手にしてはならんぞ」

車座になるよう皆を促し、太子に関わらぬよう示し合わせる。

なおも近づいてくる太子の気配を感じながら、彼は視線を向けぬよう努める。

他の四人も同様に、涼しい顔を装った。

だが威厳のある、それでいて包み込むように優しい空気が頬をなでた。

(別れる前とは明らかに異なる…)

溝陳如は太子の変化を確かめたくて仕方がなくなり、さっき仲間と交わした約束ももう守っていられなくなった。

堪え切れず悉達多太子の姿を見た時、彼は確信した――

堕落どころではない。まさしく指の先までが大覚成就の尊容。一切覚者、仏陀となられたのだ。
 
「せ……世尊 」

思わず声を出して駆け寄る。

ある者はひれ伏し、ある者は衣鉢を取り、ある者は座を設け、ある者は洗足水をもって仏足を礼拝した。

仏陀の威徳に、皆、ぬかずいたのである。
 
「我は一切の知者となれり。一切の勝者となれり。我ついに永遠の目的を成就せり。我はそなたたちに無上の法を授けに来た。ここに真理を説こう。よく聞くがよい」
 
これが地球上における、仏陀の初めての説法、初転法輪(しょてんぽうりん)である。

人々の荒れ果てた心の大地に、初めて法輪が転ぜられたのであった。

釈迦四十五年間のご布教が、ここに開始され、溝陳如たち五人は最初の仏弟子となったのである。
 
*三界……迷いの世界

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あさだ よしあき

ブログ作成のお手伝いをしています「あさだよしあき」です。 東京大学在学中、稲盛和夫さんの本をきっかけに、仏教を学ぶようになりました。 20年以上学んできたことを、年間100回以上、仏教講座でわかりやすく伝えています。
 
   

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