報恩講とはどんなこと?
毎年浄土真宗の寺院で行われる「報恩講(ほうおんこう)」という行事があります。
浄土真宗の年間行事の中でも最大のもので、大きな寺院では大々的に宣伝されるのが報恩講です。
報恩講は一体なぜそれほど重要視されるのでしょうか。
報恩講とはどのような行事か、についてお話しします。
(質問):「報恩講(ほうおんこう)」という行事があると聞きますが、どんな行事でしょうか
(解答)
毎年、全国各地の浄土真宗のお寺で「報恩講」が営まれます。「ほんこさん」と呼ばれる地域もあります。
報恩講とは字の意味からすれば「恩に報いる集まり」ということですが、浄土真宗で言われるのは親鸞聖人のご恩に報いる集まりのことです。
浄土真宗をひらかれた親鸞聖人は、弘長2年(1262)11月28日に90歳でお亡くなりになりましたので、その11月を中心に報恩講は開催されています。
報恩講は親鸞聖人のご恩に報いる集まりなので、親の恩に報いるには親の喜ぶことをするように、親鸞聖人のご恩に報いるためには親鸞聖人の喜ばれることをすることが大事です。
まず親鸞聖人の喜ばれることは何かを知り、それを実行するのが報恩講です。
親鸞聖人の喜ばれることについて、親鸞聖人の教えを伝えられた蓮如上人は『御正忌の御文章』にこう仰っています。
この御正忌(ごしょうき)のうちに参詣をいたし、志を運び、報恩謝徳(ほうおんしゃとく)をなさんと思いて、聖人(しょうにん)の御前に参らん人の中に於て、信心を獲得せしめたる人もあるべし、また不信心の輩もあるべし。以ての外の大事なり。
*御正忌……報恩講のこと
*御文章……蓮如上人のお手紙。御文(おふみ)ともいう
(意訳)
報恩講に参詣し、親鸞聖人のご恩に報いようと集まられた皆さんの中には、信心獲得している人もありましょうが、まだ信心獲得していない人もおありでありましょう。信心獲得していないほど、私たちの一大事はありません。
信心獲得は「しんじんかくとく」ではなく「しんじんぎゃくとく」と読みます。
信心獲得することが親鸞聖人が一番喜ばれることだから、早く信心獲得しなさいよと、蓮如上人は教えられています。
信心獲得とは、親鸞聖人の教えを聞かせていただいて、本当の幸せになることをいいます。
私たちは何とか幸せになりたいと日々努力しています。
仕事をするのも、家事をするのも、友達と遊びに出かけるのも、健康のために運動するのもすべては幸福のためです。
しかしそうやって手に入れる幸福は一時的なもので、いずれは消えてなくなってしまうものばかりです。
歎異抄という書物にはこのように説かれています。
煩悩具足の凡夫(ぼんのうぐそくのぼんぶ)、火宅無常の世界(かたくむじょうのせかい)は、万のこと皆もって空事(そらごと)・たわごと・真実あること無きに、ただ念仏のみぞまことにて在します。(歎異抄)
(意訳)
欲、怒り、愚痴いっぱいの人間(煩悩具足の凡夫)が、火のついた家にいるような不安いっぱいの世界(火宅無常の世界)に生きている。それに一切の例外はありません。そんな世界に住んでいる人間が、ただ一つ、本当の幸せ(念仏)になれる道があるのですよ。
親鸞聖人が教えられている本当の幸せ(信心獲得)とは、どんな幸せなのか。どうすれば信心獲得できるのでしょうか。
それを知るためにも、教えを聞かなければなりません。
親鸞聖人の教えをよく聞き、本当の幸せになるのが、親鸞聖人の一番喜ばれることであり、報恩講が行われる目的です。
昔の報恩講の様子
他の御文章には当時の報恩講の様子が書かれているものもあります。
今月28日の報恩講は、昔年(しゃくねん)よりの流例(るれい)たり。これによりて、近国・遠国の門葉(もんよう)、報恩謝徳の懇志を運ぶところなり。二六時中(にろくじちゅう)の称名念仏、今古退転(こんこたいてん)なし。これ即ち、開山聖人の法流、一天四海(いってんしかい)の勧化、比類なきが致すところなり。この故に、七昼夜の時節に相当り、不法不信の根機に於ては、往生浄土の信心獲得せしむべきものなり。
蓮如上人は報恩講を七昼夜、一週間続けて行われました。
報恩講に、本当の幸せになろうと全国から多くの人が集まって、親鸞聖人の教えを聞いている様子が彷彿といたします。
報恩講をご縁に、親鸞聖人の教えを聞かせていただきましょう。
まとめ
報恩講とは親鸞聖人のご恩に報いる集まりのことで、親鸞聖人の最も喜ばれることは、私たちが真剣に仏法を聞いて、信心獲得=本当の幸せになることです。
報恩講で信心獲得しようと蓮如上人の時代には日本中から京都の本願寺に門徒が集まり、親鸞聖人の教えを聞きました。
私たちもかつてのように報恩講で親鸞聖人の教えを聞かせていただきましょう。
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