お釈迦様は北枕で亡くなった?|北枕が縁起が悪いと言われる理由
寝るときに北枕にすると縁起が悪いという話を聞いたことはないでしょうか。
「それは知ってる、聞いたことある」という方は多いと思いますが、では「なぜ北枕は縁起が悪いと言われるのか理由をご存知ですか」と聞かれると答えられない方も少なくないのではないでしょうか。
朝日放送系列のテレビ番組『そんなコト考えた事なかったクイズ! トリニクって何の肉!?』の中で、「縁起が悪いと言われているのは何枕?」という問題が出題されていました。
昭和生まれの回答者は全員正解でしたが、平成生まれの回答者は分からない人が少なからずいました。
分からなかった人の中には東大や慶応大の大学生もおり、最近は「北枕」という言葉を聞いたことがない人も多いようです。
昭和生まれの出演者や観客の皆さんは「なんで北枕を知らないの?」という反応でしたが、「ではなぜ北枕が縁起が悪いと言われるのか」となると、分からない人が多かったです。
なぜ北枕は縁起が悪いと言われるのでしょうか。
頭北面西右脇臥
北枕は亡くなった方を北枕で安置するという話はよく耳にすると思います。
葬儀会場のホームページでも亡くなった遺体を北枕で安置することが書かれてあり、病院では人が亡くなると葬儀社が遺体を搬送しに来るまでの間は北枕で寝かせます。
なぜ北枕で寝かせるのかと言いますと、お釈迦様がお亡くなりになるとき北枕だったからです。
お釈迦様が亡くなったときの様子について「頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)」と言われています。
これは頭を北に向け、顔を西に向け、右脇を下にして亡くなったということです。
お釈迦様が亡くなられるときの姿を現した「涅槃図(ねはんず)」や「涅槃仏(ねはんぶつ)」をご存知でしょうか。あのお姿はお釈迦様がゴロンと片肘をついてのんびりされているのではなく、亡くなられたときの「頭北面西右脇臥」の姿です。
北枕は縁起が悪いと言われる理由
そのお釈迦様が亡くなられたときの姿を模して、亡くなった方の極楽往生を願って、遺体を北枕にする習慣が生まれました。
それがだんだんと「お釈迦様の亡くなられたときの様子を模して」の部分が抜けて、死んだ人は北枕にする→北枕は死んだ人の寝方→北枕で寝ると死んでしまう、に変わってきて「北枕は死んだ人の寝方だから縁起が悪い」と言われるようになってしまったのです。
もともと、亡くなられた方を北枕にするのは、亡くなった方に極楽往生してほしいという心からなされたことでありましたから、北枕で寝ると寿命が縮んだり、病気になったりすることはありません。
昔から言われていることでも「北枕は縁起が悪い」とは迷信であって、北枕はお釈迦様と関係がありますが、「北枕は縁起悪い」とは仏教とは関係ないことがわかります。
法然上人も親鸞聖人も北枕で亡くなられた
亡くなるときに北枕にする習慣は法然上人や親鸞聖人の時代には既にありました。
法然上人の臨終の御様子について、親鸞聖人は『高僧和讃』の中に
道俗男女預参し
卿上雲客群集す
頭北面西右脇にて
如来涅槃の儀をまもる
と、法然上人は「頭北面西右脇」の北枕の姿でお釈迦様と同じようにして亡くなられたと書かれています。
また親鸞聖人の臨終の御様子について、曾孫の覚如上人が書かれた『御伝鈔』には
聖人弘長二歳壬戌仲冬下旬の候より、いささか不例の気まします。それよりこのかた、口に世事をまじへず、ただ仏恩のふかきことをのぶ。声に余言をあらはさず、もつぱら称名たゆることなし。しかうしておなじき第八日午時頭北面西右脇に臥したまひて、つひに念仏の息たえをはりぬ。
とやはり頭北面西右脇の北枕の姿で亡くなられたと書かれています。
法然上人と親鸞聖人の関係についてはこちらの記事をご覧ください。
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