源信僧都と母の手紙|仏教を聞く目的は何か(中級)
仏教と聞くと、自分に関係無いとか、年をとってから聞くものと思う方もあるかもしれません。
そこで、今回は仏教を聞く目的を教えられている、源信僧都(げんしんそうず)とお母さんとのエピソードを紹介したいと思います。
源信僧都の生い立ち
親鸞聖人(しんらんしょうにん)が尊敬される
幼い頃にお父さんが亡くなり、千菊丸は母の手一つで育てられました。
旅の僧侶に優れた知性を見出された千菊丸は比叡山に入り、源信と名を改められ天台宗の学問を始められました。
源信はみるみる頭角を現し、若干15歳にして時の天皇、村上天皇の前で経典の講釈を務め上げられたのでした。
若くして弁舌爽やかな源信に村上天皇は感銘を受け、褒美として七重の衣や金銀装飾の飾り香炉などの宝物を与えました。
思わぬ大出世に源信は大喜び、早速故郷の母に知らせ、褒美の宝物を送りました。
「何しろ天下の珍宝だ。郷里の母上もお喜びになるに違いない」と得意気の源信でした。
しかし、後日、母に送った宝物がそっくりそのまま送り返されてきたのです。
そこには母から源信に宛てた一筆の手紙が添えられていました。
「後の世を 渡す橋とぞ 思いしに 世渡る僧と なるぞ悲しき」
(説明)生まれた者は必ず死んでいかねばならない。万人に必ず訪れる死んだらどうなるかの一大事・この一大事の解決して、死がやってきても崩れない幸せになる。これを教えられたのが仏教であり、この後生の一大事の解決を説き、人々を導くのが僧侶の本分であろう。私がお前を出家させたのは、この後生の一大事の解決を説き、人々を真の幸せに導く本当の僧になってもらいたかったからである。それなのに、為政者に認められたくらいで有頂天となり、名誉や財宝を与えられたことを喜ぶとは何事か。金や名誉の為に法を説くエセ坊主になってしまったことをこの母は何よりも嘆いている。どうか、仏道を求める初志を思い出して、後生の一大事を解決してもらいたい。そして、すべての人に、後生の一大事の解決の道を伝える、真の僧侶になってくれることが母の唯一の願いである
この母からの手紙を読み、豁然(かつぜん)として目の覚めた源信は、宝物を焼き払い、名誉も地位も投げ捨てて、草庵に篭り、後生の一大事の解決一つを求められるのでした。
やがて後生の一大事の解決をした源信僧都は母にそれを伝え、親子ともに後生の一大事を解決して仏法を喜ぶ永遠の親子となったのでした。
仏教の目的
源信僧都がお母さんからの手紙で諭されたように、私たち万人の確実な未来は死ぬことです。来るか来ないか分からない老後の心配は多くの人がしますが、自分にやってくる死を本当に心配をする人はありません。
この後生の一大事とその解決を教えられた方がお釈迦様であり、そのお釈迦様の教えが今日、仏教と言われています。
仏教を聞く目的は金や名声、地位等のためではなく、この後生の一大事の解決一つのためなのです。
後生の一大事
後生の一大事について、わかりやすく教えられたのが、蓮如上人(れんにょしょうにん)の「白骨の章」というお手紙です。
誰の人も早く後生の一大事を心にかけて (白骨の章)
後生の一大事について、お知りになりたい方はこちらへ
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