「因果応報」を味方につける|今、この瞬間から運命が好転する6つの秘訣
運命について使う「因果応報」とは、仏教の言葉です。
悪事を働いて生きてきた人が、最後に破滅したときに「あいつは悪いことばかりしてきたから、あんな目に遭っても因果応報だ」などと使うことが多いかもしれません。
しかし、実は悪いときばかりに使う言葉ではないのです。
今回は「因果応報」という言葉から、仏教で教えられる運命のしくみについてお話しします。
今日から確実に運命が好転する「因果応報」を味方につけるとは、どんなことでしょうか。
70歳からでも人生は変えられる
「今日の運勢は……」
朝一番のテレビから聞こえてくると、ちょっと知りたくなります。
“運命はどうして決まるのか”はどんな人も最も知りたいことでしょう。
その最大関心事について、仏教は実に論理的に説かれていることをご存じですか。
19世紀ドイツの哲学者ニーチェも、仏教についてこう称賛しています。
「仏教は、歴史的に見て、ただ一つのきちんと論理的にものを考える宗教と言っていいでしょう」
仏教では、今の自分の運命は過去の自分の行為が生み出したものであり、今の行為が未来の運命を生み出すのですよ、と教えられています。
カーネルおじさんが教えてくれたこと
ところがそう聞いても、「理屈はそうだけど、今さら行いを変えたって人生はそう変わるものじゃないよ」という方もあるでしょう。
そんな思いは全く不要です。
老若男女、貧富貴賤など全く関係なく、まいたタネ(行い)は、正直に結果を現しますから、何歳になっても人生を変えることができるのです。
町で見かけるケンタッキー・フライドチキン(KFC)の入り口に、白いタキシードを着たおじさん(カーネル・サンダース)の人形が立っています。
現在世界中にチェーン店を持つKFCには創業当時このようなエピソードがありました。
***
カーネルサンダースは40歳で、幹線道路沿いにガソリンスタンドをオープンし、その一角に物置を改造した6席のレストラン・コーナー「サンダース・カフェ」を始めた。
途中で息子の死や火災に遭うなどの困難を乗り越え、51歳のときには147席のレストランを再建。
客席を回り「私の料理がもしおいしくなかったら、お代は要りません」と意見を聞きながら、フライドチキンのオリジナル・レシピを完成させた。
ところが65歳のとき、町外れに高速道路が通ると車と人の流れが変わって、客が来なくなり、閉店を余儀なくされた。
無一文になったサンダースは、ワゴン車で寝泊まりしながら各地を回り、フライドチキンのレシピを売り、1本売るごとに幾らかの利益をもらうビジネス(フランチャイズ)契約を取りに回った。
1009回の断りを受け続けたが、73歳までにサンダースのフライドチキンを提供する店は600店舗以上になった。
その後、自分の調理法が正しく行われ、きちんと提供されているか、年間数十万キロの移動もいとわず世界の店舗を見て回った。
***
現在、ケンタッキー・フライドチキンは世界で約1万8千店舗あります。
6歳で父が亡くなり、女手一つで3人の子供を養う母を助けるために、家族にパンを焼いて大喜びされたのが7歳の時。
「おいしいもので人を幸せにしたい」との熱い思いが、フライドチキンとなって世界中に広まったのです。
「人生は自分でつくるもの。遅いということはない」(サンダース)
幾つになってもあきらめなければ、必ず道は開かれるのです。
*ニーチェ……ドイツの哲学者。当時、圧倒的に力のあったキリスト教に対して「神は死せり」と宣言したことで有名
*「仏教は、~」……『キリスト教は邪教です!』ニーチェ(著)適菜収(訳)より
因果応報──因(行い)に応じた果(幸・不幸)が現れる
その運命の法則を仏教では「因果応報」という言葉で表しています。
「因果応報」は、仏教の根幹の教えである「因果の道理」から出た言葉です。
根幹とは、根や幹ということ。仏教を一本の木とすると、根っこがなければ木は枯れ、幹を切ったら木は倒れてしまいます。
ですから根幹の「因果の道理」が分からなければ、仏教の教えは一切分かりません。
では「因果の道理」とはどんなことでしょう。
「因果」とは、原因と結果ということ。
どんな結果にも、必ず原因がある、原因なく結果が現れるということは、万に一つもない。
飛行機が墜落して海底深く沈んでしまった場合など、原因が分からないことはありますが、原因が“ない”のではありません。
それは、「運命が、何によって決まるのか」という誰もが知りたい問いについても例外ではありません。
「あの人は運がいい」とか、「あいつは運が悪い」とよく言いますが、運命というのは何の原因もなく、ただの偶然で決まるものではないのです。
運命の原因と結果についてお釈迦さまは、このように教えられています。
善因善果(ぜんいんぜんか)
悪因悪果(あくいんあくか)
自因自果(じいんじか)
ここで因とは行い、果は運命を表しています。
善い行いは善い運命となり、悪い行いは悪い運命を引き起こす。
例えば植物なら、ダイコンのタネをまけばダイコンが、スイカのタネからは、スイカが出てくるということです。
これは、いつの時代でも、どこの場所でもそうでしょう。
江戸時代には、ダイコンのタネからカボチャの芽が出たはずだ、とは誰も思いません。
同様に私たちの運命も、いつでもどこでも必ず原因(行為)に応じた結果が現れるということです。
そして善いのも悪いのも、自分のまいたタネ(行為)は自分が刈り取らねばならないのだよ(自因自果)、とお釈迦さまは教えられました。
これを「因果応報」ともいうのです。
幸せになれる6つのタネまき──六度万行
では、どんなタネをまけば善果が得られるのでしょう。
お釈迦さまは、たくさんの善を、具体的に誰にでもできる6つにまとめて教えられています。これを「六度万行」といわれます。次の6つです。
- 六度万行
- 布施(ふせ) ── 喜捨(きしゃ)ともいわれる。親切のこと
- 持戒(じかい)── 約束を守ること、言行一致
- 忍辱(にんにく) ── 苦しみに耐えていくこと、忍耐
- 精進(しょうじん)── 目的達成に向かっての努力
- 禅定(ぜんじょう)── 心を静め反省する
- 智慧(ちえ) ── 前の5つをまとめたもの、修養
この6つの善行が、運命を好転させる行いであり、このうちのどれか1つを行うと、他の5つ全てを修めたことになると教えられています。
お釈迦さまは自分ができそうな善を、まず実行しなさいと勧められました。
今回はその最初に挙げられる「布施」について解説いたします。
布施について
「布施」には大きく分けると、お金や物、無償の労働などを施す「財施(ざいせ)」と、正しい教えを説く「法施(ほうせ)」がありますが、最も身近で、物やお金を持たなくても誰もが心がけ一つでできる和顔愛語(わげんあいご)という布施行を紹介します。
和顔愛語は和やかな顔で接し、優しい言葉をかけることです。
高齢になり、施設に入って元気のなかったおばあさん。
朝、施設の職員が部屋の窓を開けると、通学途中の子供が元気に笑顔で挨拶をしてきた。
その子供たちに心を開いたおばあさんは、毎朝窓を開けて自分からも挨拶することを楽しみにし、リハビリにも積極的になって、施設職員をも喜ばせたという話があります。
子供の笑顔が、おばあさんを元気にし、おばあさん自身も笑顔で挨拶することで健康を回復させ、周りの人も幸せにしたのですね。
ある元警察官は、毎朝、庭から道行く人に挨拶をしています。
それは、近所の人と心を通わせるだけでなく、犯罪を抑止して安心を得るためだそうです。
泥棒が犯行をあきらめる一番の理由は「近所の人に声をかけられた」「近所の人に顔を見られた」から。
あるホームセンターでは、店員がお客さんに笑顔で挨拶するようにしたところ、年間の万引き被害額が30パーセント減ったといいます。
どんな対策も、思うように効果が上がらず頭を抱えていた犯罪が、笑顔と挨拶で減らせるようになったのですから、善因善果、自因自果、和顔愛語の力が知らされます。
相手を思って声をかければ、犯罪を犯すようなささくれだった心をも癒やすのでしょう。
小さな善行を続ければ人生が変わる
「そんなささいなことで、変わるもんじゃないよ」という声も聞こえてきますが、小さなタネでもやがて大きな結果となります。
樹齢2000年ともいわれる屋久島の縄文杉は、大人十数人が手をつないでようやく囲めるほど、太く大きい幹のものがあります。
しかしそのタネは米粒よりも小さなタネ。
そんな小さなタネから、時間がたつと考えらないほどの大きな樹木に育つのです。
ほんの少しの笑顔や挨拶、優しい言葉をかけることは、ささいなことのようですが、そのタネまきは人生を大きく飛躍させる可能性を持つのですね。
いつでもどこでも変わらない因果の道理を深く信じ、従って、どんな小さな善でも心がけていけば、必ず善果が現れ、幸せな毎日が送れるようになる。
「因果応報」を味方につけるとはこのようなことです。
だから今日から、否、ただ今から、少しでも善いタネまきを実践していきましょう。
縁を選ぶことも大事
ところで、原因が結果となって現れるには「縁」というものが必要です。原因が結果となって現れるのを助けるものが縁です。
簡単な例を紹介すれば、コシヒカリという品種のおいしい米のモミ種でも、育てる地域によって、米の味は変わります。
同じタネでも縁によって結果は大きく変わりますから、縁を選ぶことも大事なことです。
まとめ
運命の一切は自分のまいたもの、まかぬタネは生えぬと反省し、一つ一つ誠心誠意、できることから着実に対応していけば、人生、思わぬ道が開けてくるものです。
他にもお釈迦さまの有名な言葉を紹介します。
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