「娑婆の空気はうまい」の「娑婆」は仏教から出た言葉 仏教で娑婆の意味とは
映画等で、刑務所から出た人が「娑婆の空気はうまい」と言っている場面が出てきます。では娑婆とは、刑務所から出た世界や、私たちが普段暮らしている刑務所の外を娑婆というのでしょうか。
これは、本来の意味ではありません。
仏教で言われる正しい「娑婆」の意味を解説します。
(質問):「娑婆の空気はうまい」の「娑婆(しゃば)」は仏教から出た言葉と聞きましたが、「娑婆(しゃば)」とは、どんな意味でしょうか。
答え
「娑婆」とは仏教から出た言葉です。
昔のインドの言葉(sahā, サハー)を漢字で音表したのが「娑婆」です。
中国の言葉では「堪忍土(かんにんど)」と訳されます。堪忍土とは、私たちが生きている世界のことをいいます。
どうして、私たちが生きている世界を堪忍土というのでしょうか。
この世界は、苦しみ悩みが絶えず、堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍んで生きていかねばならないので、堪忍して生きていく世界、堪忍土といわれます。
娑婆に対して、苦しみ悩みのない世界を極楽とも浄土ともいいます。
なぜ刑務所から出ると「娑婆の空気はうまい」と言うのか
それがどうして「娑婆の空気はうまい」という使われ方をするようになったのでしょうか。
これは、刑務所に入っている人にとっての外の自由な世界を意味しています。
江戸時代、遊郭は男性にとって楽しいところだったので、娑婆に対して極楽に例えていました。
しかし遊郭で働く女郎からは、遊郭の外の世界、娑婆こそ自由の世界ということで、「娑婆」が外の自由な世界を意味するようになりました。
合宿等で閉じ込められたり、人里離れた地に異動になり、余り自由のきかない生活をしている人が外の世界に戻りたい気持ちから「早く娑婆に戻りたい」と使う人もあります。
まとめ
「娑婆」は仏教から出た言葉で、私たちが生きている世界のことを言います。
この世界は苦しい中を堪え忍んで生きていかなければならないので、中国では堪忍土と訳されます。
「娑婆」が現代のような使われ方をするようになったのは、江戸時代の遊郭で働く女郎が「娑婆(=遊郭の外)こそ自由な世界だ。娑婆はいいなあ」と使うようになったのが広まったためです。
本来仏教は娑婆に戻るのではなく、娑婆をこの世から極楽にする方法が教えられています。
こころは浄土にあそぶなり (親鸞聖人)
(意訳)こころは浄土で遊んでいるように明るく愉快である。
仏教の基礎を少し学んでみませんか?
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