暮れゆく人生を安心して生き抜く|「墓じまい」と真実の仏法(後)
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「私は墓の下にはおらん」と聖人
では「私」は死ねばどうなるか。
無になるのでないとするなら、どこへ行くのでしょう。
闇黒の世界よりも明るい無量光明土でありたいのが、全人類の熱願でありましょう。
親鸞聖人は
我が歳きわまりて
安養浄土に還帰す(御臨末の御書)
と宣言されています。
「阿弥陀仏に救われた親鸞、死ねば弥陀の極楽浄土(無量光明土)へ往くから墓の下にはいないぞ」との明言です。
そのあとに
「寄せては返す波のように、極楽浄土からすぐさまこの娑婆へ戻ってくる」
「無限に衆生済度の活動が始まるのだ」とも仰せです。
極楽でのんびりなどしていないぞ。
この世に苦悩の人がいる限り、寄り添って救わずにおれないのだとの喜びの表明です。
ましていわんや墓の下などにどうしておれましょう。
では、死ねば誰でも彼でも親鸞さまと同じく、極楽へ往けるのでしょうか。
それについて親鸞聖人のみ教えを正確に日本中に伝えられた蓮如上人からお聞きしてみましょう。
この御正忌のうちに参詣をいたし、志を運び、報恩謝徳をなさんと思いて、聖人の御前に参らん人の中に於て、信心を獲得せしめたる人もあるべし、また不信心の輩もあるべし。以ての外の大事なり。
その故は信心を決定せずは、今度の報土の往生は不定なり。されば不信の人も速に決定の心を取るべし。
(御文章五帖目十一通)
このたび皆さんは、広大な親鸞聖人のご恩を知らされ、報恩講に参詣されました。
そして尊い布施をなされた皆さんには、信心獲得している人もあるでしょうが、まだ信心獲得していない人もありましょう。
信心獲得していないほど、私たちの一大事はありません。
なぜかと言いますと、信心獲得していなければ、極楽へ往生して仏にはなれないからです。
だから、皆さんに早く信心獲得していただきたいのです。
えっ 「誰でも極楽」ではないの?
浄土真宗の門徒には
「阿弥陀如来の呼び声は南無阿弥陀仏の名号となって、今この私に届いているから、誰でも極楽へ往けることに気づかせていただきましょう」
というのが親鸞聖人の教え、と聞かされている人が多くあります。
誰もが死ねば極楽へ往って仏になれるというのは、蓮如上人の『御文章(御文)』に反することで断じて聖人の教えではありません。
現在ただ今、信心獲得して往生一定(浄土へ往けることがハッキリすること)の大満足に救われていなければ、死んで極楽浄土へは往けないし、仏にもなれないのです。
さらに親鸞聖人は、信心獲得していなければ極楽どころか、取り返しがつかないことになると警鐘を鳴らされています。
「呼吸の頃すなわちこれ来生なり。一たび人身を失いぬれば万劫にも復らず。この時悟らざれば、仏、衆生を如何したまわん。願わくは深く無常を念じて、徒に後悔を貽すことなかれ」(教行信証)
吸った息が吐けなかったら、吐いた息が吸えなかったら来世である。後生は遠い話ではない。死ねば二度と同じ人身に戻ることは永遠にないのである。
今、この一大事を解決しなければ、いつできるであろうか。
永遠のチャンスは今しかないのだ。
されば刻々と迫る無常を凝視して、決して後悔を残すことがあってはならない。
死ねば二度と戻らぬのが人の一生。
だからこそ南無阿弥陀仏の名号を賜って(信心獲得)間違いなく弥陀の浄土へ生まれる身になりなさいよと、聖人は生涯教えていかれました。
浄土に往生して阿弥陀如来と同じさとりを開いた人は、還相の菩薩としてこの世に戻り、迷える衆生を救済する活動をせずにおれなくなります。
それは弥陀より賜った、六字の名号(南無阿弥陀仏)の大慈悲心によるものです。
だからこそ信心獲得は、亡くなった方を幸せにする道でもあるのです。
「『親鸞閉眼せば賀茂河にいれて魚に与うべし』と云々。これすなわち、この肉身を軽んじて、仏法の信心を本とすべき由をあらわしまします故なり。これをもって思うに、いよいよ葬喪を一大事とすべきにあらず。もっとも停止すべし」
(改邪鈔)
「私が死ねば、屍を賀茂川に捨てて、魚に食べさせよ」と、しばしば親鸞聖人が仰ったのはなぜか。それはセミの抜け殻のような肉体の後始末よりも、永遠の魂の解決〈信心獲得〉こそが、最も急がなければならないことを教導されたものである。されば葬式などを大事とすべきではあるまい。やめるべきであろう。
静かに墓前にぬかずくことは、人生を見つめる得がたい機会になることは間違いありません。
「私も、死なねばならぬのか」と生死の一大事に触れて、厳粛な思いになるでしょう。
葬式や墓参りを儀礼だけに終わらせず、無常を見つめ、自身の一大事解決のために聞法し、弥陀の救いにあう勝縁にしたいものです。
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