最近「鬼」という字をよく見るけど鬼って何?|仏教に説かれる鬼の正体
「鬼」という字はどこでも見かけます。
最近有名な「鬼滅の刃」以外にも酷いことを言ったりやったりする人を「あの人は鬼のような人だ」と言ったり、厳しい教官を「鬼教官」と呼んだりしています。
また桃太郎をはじめとした昔話にもよく鬼が出てきます。
それだけ身近な存在なので、「鬼滅の刃は鬼退治の話」と聞いても「ああ、そういう話なんだ」とすぐに納得できるのでしょう。
しかし鬼とは何なのかと聞かれても「妖怪の一種かなあ」と曖昧な答えしか出てこない人も少なくないと思います。
鬼とは一体何なのでしょうか。
鬼とは何か
鬼というと金棒を持っていて人間より一回り二回りも大きい角の生えた妖怪をイメージしますが、死んだ人や動物の霊、妖怪、悪い心を持つ人間が変化したもの、怨霊などいくつかの種類があります。
平安時代の説話によく出てくる鬼は人間を食べる恐ろしい妖怪です。
また一方で人間に化ける鬼もいます。
「鬼」という概念が生まれた理由は諸説あり、正確なことはわかっていませんが、死者の魂、自然崇拝、仏教、病気や得体の知れないものへの恐れなどが合わさって鬼の概念になっていきました。
日本でよく知られている鬼の姿は仏教に出てくる地獄の獄卒のことです。
仏教に説かれる鬼
仏教の話の中には青鬼・赤鬼・黒鬼が出てきます。
桃太郎が退治に行った鬼ヶ島にはこれらの鬼が住んでいましたし、「泣いた赤鬼」の童話もあります。
これらに出てくる鬼の色は仏教に教えられる「貪欲」と「瞋恚」と「愚痴」という煩悩から出た色です。
貪欲
貪欲とは、あれが欲しい、これが欲しいという欲の心です。
人間で、欲のない人はありません。代表的なものを五欲といい、食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲の五つです。
食欲は、食べたい飲みたいという心です。生きるためには仕方がないと、ウシやブタ、ニワトリや魚など、生き物の命をどれだけ日々奪っているか、わかりません。
財欲は一円でも多くお金が欲しい、物が欲しいという心です。
遺産相続では家族親戚と骨肉相はむ争いを始めます。
色欲とは男は女を、女は男を、常に異性の関心を得ようと身を焦がし、寸時も安らかでない心です。
三角関係のトラブルは、古今を通して、絶えたことがありません。
名誉欲とは有名になりたい、褒められたい、認められたいという心です。
出世したい、一番になりたいと、競争社会では地位や名誉を得るために、他人を欺き、蹴落としても平気なのは、名誉欲の仕業です。
睡眠欲は、朝晩はもちろん、暇があったら一分一秒でも長く寝ていたい、また楽がしたいと思う心です。
これらの欲望は底なしで、どこまでいっても満たされることはありません。欲の本性である我利我利、自分さえよければ他人はどうなってもよいという心で、どれだけ恐ろしいことを思うか、わかりません。
海は深ければ深いほど青くなるように、欲の心も海のようにどこまでも深いので青色で表されます。
瞋恚
瞋恚とは、欲の心が妨げられると出てくる、怒りの心です。
怒という字は、心の上に奴と書きます。
「あいつが邪魔するからだ」「こいつさえいなければ」と、心の中で殺しているのが怒りであり、激しいことは炎のようなので瞋恚は赤色で表されます。
人前で侮辱されたらどうでしょう。
「あいつのせいで、恥かかされた」と一生忘れられません。
逆上して、衝動のままに親でも子供でも恩人でも切り刻み、八つ裂きにします。
毎日のワイドショーでは、そんな事例に事欠きません。
愚痴
愚痴とは、恨んだり、ねたんだりする心です。他人の幸せは苦々しく、他人の不幸がおもしろい心です。
にわか雨に遭って狼狽している人を見て、喜ぶ心はないでしょうか。
犬にほえられ、困惑している人を見て、笑ってはいないでしょうか。
「お気の毒に」と口では言いながら、ひそかにほくそえむ心があることに慄然とします。
醜い心がとぐろを巻いています。愚痴は汚い醜い心なので黒色で表されます。
このような心で悪を造り、その結果を受けて苦しんでいるのが私たちです。
お釈迦さまはこれらの煩悩を青鬼・赤鬼・黒鬼と教えられました。
この鬼には、徳の高い人、多くの人から称賛されている人、偉人だと言われている人でもかないません。
欲、怒り、恨み憎しみの心の前では学問も教養も修養、倫理、道徳もすべて吹き飛んでしまいます。
鬼ヶ島の鬼を退治したのは桃太郎でしたが、私たちの心の鬼を退治するにはどうすればいいのでしょうか。
この煩悩に悩まれたのが若き日の親鸞聖人です。
親鸞聖人はどのように煩悩と闘われたのでしょうか。
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