ノーベル経済学賞に選ばれた因果推論の考え方と仏教の因果の道理
2019年のノーベル経済学賞には、貧困問題を因果推論による手法によって解決しようと試みている
- エステル・デュフロ教授(マサチューセッツ工科大学)
- アビジット・バナジー教授(マサチューセッツ工科大学)
- マイケル・クレマー教授(ハーバード大学)
の3名が選ばれました。
3名は世界の貧困問題を解決するために「ランダム化比較試験」を取り入れ、貧困解消のための実践的な取り組みを行い、その結果数百万人の子供たちを支援したことが今回評価されました。
因果推論とは「2つの事柄に因果関係があるのか」を調べる方法です。
どのようなものなのでしょうか。
因果推論とは
因果推論についての難しい計算式や専門用語の細かな解説は他のサイトに譲るとしまして、簡単に解説します。
例えばダイエットに日々の10分間のランニングは効果があるのか知りたいと思ったとき、「ランニングをした人」と「ランニングをしていない人」とを比べてランニングとダイエットの因果関係を推測することができます。
ところが、単純に友人に「今日から自分はランニングするから君はしないでくれ。3ヶ月後に2人の体重の減少を調べればランニングが体重減少の役に立つはずかどうかわかるはずだ」とお願いして実験しても本当にランニングに効果があるかはわかりません。
なぜならランニングしているから大丈夫だろうとたくさん食べるようになり、逆に体重が増えるかもしれませんし、ランニングしないよう頼んだ友人がランニングはしない代わりにジムに通いだして、よりハードな運動を始めるかもしれません。
正確なデータを出したければ「今日から3ヶ月間ランニングをした自分」と「今日から3ヶ月間ランニングをしなかった自分」とを比較しなければなりませんが、そのようなことは現実にはできません。
そんなときに因果推論で用いられる一般的な方法が「ランダム化比較試験」です。
これは無作為に十分な数の対象を選んで試験を行い、結果を比較するものです。
自分と友人の2人だけではわからなくとも、ランニングをした人1000人とランニングをしなかった人1000人とを比べれば信頼できる可能性が大幅に大きくなります。
この考え方は薬の効果を確かめるために多く使われてきた手法ですが、今回ノーベル経済学賞を取った3人はこれを開発経済学、具体的には途上国への義援金の効率的な使い方について導入したことが評価されました。
多くの実験の結果、例えば
「子供たちに予防接種を受けさせるには『予防センターが地域を巡回』し、かつ『予防接種に来たときには1キロの豆を渡す』のがよい」
「子供たちがマラリアにかかるのを防ぐためには『蚊帳を無料で配付』するのがよい」
「教育を受けさせるには『教育のメリットを伝える』、もしくは『子供たちの腸内にいる寄生虫を駆除する』のがよい」
などが判明し、途上国の発展に効果が出ています。
仏教の因果の道理
ノーベル経済学賞を受賞した因果推論の考え方により、どのような施策が途上国の発展に効果があるか、わかってきました。
実は、今から2600年前に、私たちの行動と私たちの受ける結果について、明らかにされたのがお釈迦さまの説かれた因果の道理です。
お釈迦さまは私たちの行為と運命の関係について
善因善果
悪因悪果
自因自果
と教えられています。
良い行いをすれば良い結果が起こる
悪い行いをすれば悪い結果が起こる
自分のやった行いが自分の結果としてやってくる
私の幸・不幸は全て、私の行為が生み出したもので、万が一にも例外はない、と教えられています。
仏教では、行いには三つあると教えられています。心の行い、口の行い、身の行いです。心の行いとは、心でいろいろ思うこと、口の行いとは、口でいろいろしゃべること、身の行いとは、体でいろいろやることです。
仏教では、三つの中で心の行いが最も重いと教えられます。それは、口や身を動かしているのは心だからです。
心で思っていること、口でしゃべっていること、身でやっていること、それが原因となって、自分が受ける結果が現れる。自分に現れる結果の一切は、私の過去の行いが生み出したものです。
未来の私は、現在の私が生み出すのです。これをお釈迦さまは、
過去の因を知らんと欲すれば現在の果を見よ。
未来の果を知らんと欲すれば現在の因を見よ。
と説かれています。
「過去の種まき(行為)を知りたければ、現在の結果を見なさい。未来の結果を知りたければ、現在の種まきを見なさい」
未来の自分を変えるには、今の自分を変える、ここに原因があると教えられています。
より詳しく因果の道理について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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