新たに発見された親鸞聖人の真筆「十七・十八願文」の意味とは
親鸞聖人の直筆とされる経典の一部が新たに発見されました。
発見されたのは長崎県にお寺で、一枚の紙に
「設我得仏十方世界無量諸仏不悉咨嗟称我名者不取正覚設我得仏十方衆生至心信楽欲生我国乃至十念若不生者」
と書かれてあるものです。(→西日本新聞の記事へ)
これは大無量寿経というお経の中に説かれている、阿弥陀仏がなされた四十八願の中の、十七願と十八願の一部です。
親鸞聖人は九州に行かれたことはありませんでしたが、(→親鸞聖人のご生涯)親鸞聖人の直筆が九州まで伝わっていることから相当たくさん経典を書写し、多くの人に渡していたことがわかります。
今回見つかったこの経典の一説はどのような意味なのでしょうか。
阿弥陀仏とはどんな仏様か
十七願も十八願も阿弥陀仏のお約束の言葉ですが、阿弥陀仏とはどのような仏なのでしょうか。
阿弥陀仏とはお釈迦さまを含めたすべての仏の師匠・先生の仏です。
この阿弥陀仏の四十八願が説かれている大無量寿経には
無量寿仏(阿弥陀仏)の威神光明は最尊第一にして
諸仏の光明の及ぶこと能わざる所なり
と阿弥陀仏は他の仏よりずば抜けて強い光明(=仏様のお力)を持たれていると説かれています。
その阿弥陀仏がなされた四十八のお約束の中でも十七願と十八願は特に大事なお約束です。
阿弥陀仏についてより詳しく知りたい方はこちら。
十七願文の意味
今回発見された真筆には区切りなく漢字が並んでいましたが、経典ではこのように区切られます。
設我得仏 十方世界 無量諸仏 不悉咨嗟 称我名者 不取正覚
(意訳)私が仏になったならば、大宇宙の無数の諸仏が一仏も残らず、私の作る名号を褒め讃えないようならば、私は仏の座を捨てる。
「設我得仏」
「私が仏になったならば」ということです。
このお言葉は阿弥陀仏がまだ仏になられる前、「法蔵菩薩」と名乗られていたときに「私が仏になったならば、○○をする」と誓われたもののため、どの願文でも「設我得仏」から始まっています。
「十方世界」
「十方」は東西南北上下の6方向に加えて、北東や南西などの東西南北の間の4方向を入れたものです。
「十方世界」で大宇宙を指します。
「無量諸仏」
仏教ではこの大宇宙には地球のようなものは量り知れないほどたくさんあり、地球に釈迦が現れたようにそれらの世界にもまた仏が現れている、と教えられています。
それらの大宇宙に無数にいらっしゃる仏様を「無量諸仏」と言われています。
「不悉咨嗟 称我名者」
「ことごとく咨嗟して我が名を称せずば」と読みます。
「咨嗟」とは褒め讃えることです。
「我が名」とは阿弥陀仏の名前のことではなく、阿弥陀仏の作られた「南無阿弥陀仏」の名号のことを言われています。
「称する」とは称えることです。
ですから「不悉咨嗟 称我名者」とは「私の作る『南無阿弥陀仏』の名号を褒め讃えて称えないならば」となります。
「不取正覚」
「正覚」は仏のさとりのことですから、「正覚を取らない」とは、取った阿弥陀仏からは「仏の座を捨てる」ということです。
この十七願で阿弥陀仏は「大宇宙すべての仏が褒め讃える名号を作ってみせる」と約束されています。
十八願文の意味
こちらも十七願と同じ様に区切りますとこうなります。
発見された文書には欠けている部分がありますので補っています。
設我得仏 十方衆生 至心信楽 欲生我国 乃至十念 若不生者 不取正覚 唯除五逆 誹謗正法
(意訳)私が仏になったならば、どんな人も私の与える信楽の信心を獲て念仏を称える者が、もし私の真実の浄土へ往生できぬことがあれば、私は仏の座を捨てよう。唯、五逆罪と正法を謗る者とは、除く。
「設我得仏」
十七願と同様に「私が仏になったならば」ということです。
「十方衆生」
「衆生」は生きとし生ける者すべてのことですが、私たちは人間ですので「十方衆生」は「すべての人」という意味です。
「至心信楽 欲生我国」
「『至心』『信楽』『欲生我国』の3つの心にしてみせる」ということですが、簡単に言えば「絶対に変わらない幸福にしてみせる」ということです。
「乃至十念」
「(信心を獲て)念仏を称えさせてみせる」ということです。
「若不生者 不取正覚」
「もし往生させることができなければ、仏のさとりを捨てる」ということです。
往生とはどういうことかについてはこちらをご覧ください。
この阿弥陀仏の十八願のことを他力本願とも言われます。
こちらの記事でより詳しく解説しています。
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