「南無阿弥陀仏」と念仏を称えることは、どんな意味があるのですか?
よく葬式や法事で「南無阿弥陀仏」と念仏を称えたり、お墓に「南無阿弥陀仏」と彫ってあるのを見聞きすることがあると思います。
昔からそういう場面では「南無阿弥陀仏」と念仏を称えるのが当たり前だと思って、合掌して「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えてきたのではないでしょうか。
しかし「南無阿弥陀仏」とはどういうことなのでしょう?
「南に無い阿弥陀仏。阿弥陀仏は南に無いということか。なんで法事では『阿弥陀仏は南に無い』って称えるんだろう?」
と考えるとよくわからなくなってきます。
今回の記事では「南無阿弥陀仏」と称えることにはどんな意味があるのかについて解説します。
質問:南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)と称える念仏には、どんな意味があるのでしょうか
念仏とは、浄土真宗では「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と口で称える口称の念仏のことをいいます。
親鸞聖人(しんらんしょうにん)といえば、「南無阿弥陀仏」を思い浮かべる人も多いでしょう。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と念仏さえ称えていれば、だれでも極楽へ往けると教えられたのが親鸞聖人」
と思われている方が多いのですが、これは実は大変な誤解なのです。
「念仏さえ称えていれば死んだら極楽へ往ける、ということはありませんよ」と教えられたのが親鸞聖人なのです。
親鸞聖人の教えを正確に伝えられた、室町時代の蓮如上人(れんにょしょうにん)は、こう教えられています。
ただ声に出して南無阿弥陀仏とばかり称うれば、
極楽に往生すべきように思いはんべり。
それは大に覚束(おぼつか)なきことなり。(御文章)
御文章(ごぶんしょう)とは、蓮如上人のお手紙を集めた書物です。
蓮如上人はお手紙の中で何度も、ただ「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と念仏を称えてさえいれば死んだら極楽へ往けるのではないのですよと、その誤りを正しておられます。
南無阿弥陀仏と口で称える念仏にはどんな意味があるのでしょうか
口で「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えていても、念仏は大きく2つに分かれます。
「他力(たりき)の念仏」と「自力(じりき)の念仏」です。
化学的には同じ涙でも、嬉し涙、悲し涙、くやし涙など、さまざまあるように同じく南無阿弥陀仏と称えていても、称え心はいろいろあります。
夜中に墓場を通るとき、魔除け心で称える念仏
肉親に死なれ、悲しみ心で称える念仏
台本にあるから、仕事心で称える俳優の念仏など、
称え心によって、念仏は「他力の念仏」と「自力の念仏」の2つに分かれます。
他力の念仏とは
他力とは、仏教では、阿弥陀仏の力のことを言います。
詳しいことを知りたい方はこちらへ
→ 「他力本願」の誤解と、本当の意味とは?
阿弥陀仏の力によって、無明の闇(むみょうのやみ)という暗い心が破れて幸せになった人は、その嬉しさに南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と念仏を称えずにおれなくなります。
念仏は、阿弥陀仏へのお礼の言葉だからです。
お礼の言葉は、日本人なら「ありがとう」ですが、アメリカやイギリスの人なら「サンキュー」、フランス人なら「メルシー」、中国人なら「謝謝」と相手によって変わります。
阿弥陀仏に対しては、「南無阿弥陀仏」と称えることがお礼なのです。
これを他力の念仏といいます。
自力の念仏とは
自力の念仏とは、他力の念仏以外のすべてを自力の念仏といいます。
仏教で教えられる無明の闇(むみょうのやみ)という暗い心を知らず、墓参りや葬式などで、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えていれば、それは自力の念仏です。
他力の念仏か自力の念仏かは、無明の闇という暗い心がなくなっているかどうか、破れているかどうかで分かれます。
無明の闇(むみょうのやみ)が破れると
無明の闇とは私たちの苦しみの元であり、一人ひとりが持っている暗い心のことです。
その無明の闇が破れるとどうなるか。親鸞聖人は、主著『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』の冒頭に
難思の弘誓(なんしのぐぜい)は難度の海(なんどのうみ)を度する大船
無碍の光明(むげのこうみょう)は無明の闇を破する慧日(えにち)なり
と教えられています。
親鸞聖人は阿弥陀仏の力によって、苦しみの元である無明の闇が破れて、本当の幸せになり、自力の念仏から他力の念仏を称える身になりなさいよと、教えていかれました。
教行信証には、それ一つ教えられています。
→ 親鸞聖人の主著、国宝『教行信証』
まとめ
南無阿弥陀仏は阿弥陀仏に救われた後のお礼の言葉として称えるものです。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えたから極楽へ往けるのではありません。
親鸞聖人も蓮如上人も、阿弥陀仏に救われてお礼の念仏を称える身になりなさいよ、と生涯教えていかれました。
では、そもそも、「南無阿弥陀仏」の六字は、どういう意味でしょうか。
月刊誌「とどろき」で詳しく説明していますので、ご覧ください。
→ 「南無阿弥陀仏」って何ですか(クリックでPDFが開きます)
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