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ヒンドゥー教から仏教に改宗する人々と仏教の平等思想

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カテゴリー:基礎から学ぶ仏教 タグ: 更新日:2019/12/03
 

最近インドでヒンドゥー教から仏教に改宗する人が増えているそうです。
 
2019年12月21日には「ヒンドゥー教はもう嫌。僕(私)は仏教徒になる!」という講演を埼玉大学のインド人留学生が行う予定で、この動きを世界に発信したいと考えている人も増えています。
 
実は、ヒンドゥー教から仏教へ改宗する動きは最近始まった話ではありません。
反カースト運動の指導者アンベードカル氏が1956年に立ち上げた「新仏教運動」がもとになっています。
 
なぜインドでヒンドゥー教から仏教に改宗する動きが広まっているのでしょうか。

ヒンドゥー教から仏教へ改宗する理由

なぜヒンドゥー教の人々が改宗するのかと言いますと、それは「カースト制度」という身分制度にあります。
 
カースト制度は1950年に憲法で廃止されたのですが、人々の意識の中では現在でもその影響が残っています。
 
カースト制度は人間を大きく、バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラに分け、職業、婚姻、住む場所、使える道具など生活の細部にまで制限を設ける制度です。
 
ヒンドゥー教には前世で善を積むと来世でより上の身分に生まれられるという輪廻観があり、今高い身分にいる人は過去世に善を積んだ結果で、上の身分になりたければ今生でがんばって善を積めと教えられます。
つまりヒンドゥー教の教えでは、今生ではどれだけ努力しようと今の境遇はどうしようもなく、死後生まれ変わったときに賭けるしかないのです。
 
しかし、この4つに入らない不可触民(アウトカースト、アチュート)と呼ばれるカースト制度の枠の外に位置する人々がいます。
カースト制度の外ですから、どれだけ努力しようと来世でも不可触民にしかなれないとされています。
 
当然彼らはカースト制度の最下層よりも酷い扱いを受けることになります。彼らは自分たちをダリット(困窮した者、押しつぶされた者、抑圧されている者
)と呼び、インド人口の16%、約1億1000万人を占めると言われます。
そのダリットが差別から逃れようと、ヒンドゥー教を捨てるのです。
 
近代になって、この不可触民制の廃止を唱え、晩年には仏教へ改宗することにより、インド仏教復興の端緒を開いた人物が、ビームラーオ・ラームジー・アンベードカル(1891-1956)です。
 
仏教はインドでお釈迦様が弘められましたが、13世紀にイスラムによって滅亡させられてしまいました。
それからインドには仏教徒はほぼ存在せず、20世紀初頭には東北部に僅かに数百人しかいませんでした。
しかし、アンベードカル氏が仏教の復興を始めてから仏教徒の数は次第に増え、2011年の時点でインド人口12億人の0.7%、数にして約800万人以上が仏教徒になりました。
 
アンベードカル氏がヒンドゥー教から改宗する先の宗教を仏教にしたのは、以下のような10の理由があります。

  1. お釈迦様はキリスト(神の子)やムハンマド(神の預言者)とは異なり、一人の人間として教えを説かれたため。
  2. お釈迦様の教えは(神の意志のような)非合理的なものではなく、理性と経験に基づいた教えのため。
  3. 仏教は自利利他を重んじて、あらゆる生き物に対する慈悲の精神を説くため。
  4. 仏教は善の教え等にも見られるように道徳を基礎とする宗教であるため。
  5. お釈迦様は人間の平等を説き、カースト制度や女性差別を批判したため。
  6. お釈迦様は苦行主義と快楽主義の両極端を否定し、中道主義を採ったため。
  7. 仏教は単に「この世は苦しいもの」で終わらせず、仏教の目的は煩悩を離れた「涅槃」という心の平安であるため。
  8. お釈迦様は「永遠な存在としての霊魂は存在しない」と説かれるため。
  9. バラモン教では死後も存続する霊魂が輪廻し、今生で起こることはすべて前世の業によって決定されると主張するが、仏教では人生の出来事を含めて、この世の全ての現象は因果関係の結果と説くため。
  10. 仏教の説く涅槃とはバラモン教の主張する梵我一如でも、あらゆる活動が停止することでもない。それは煩悩の炎が消えた平穏で清浄な状態、すなわち法身の状態であるため。

この10項目の中にもあるように、お釈迦様の時代もカースト制度はありましたが、その身分制度を打ち破ったのがお釈迦様です。
お釈迦様はすべての人は平等であり、誰でも変わらない幸福になれるのだと教えられています。

天上天下 唯我独尊

お釈迦様がすべての人は平等と仰ったお言葉が「天上天下 唯我独尊」です。
 
お釈迦様が誕生されたのは約2600年前の4月8日です。
誕生したばかりのお釈迦様は、東西南北に七歩ずつ歩まれ、天と地を指さされ、
「天上天下 唯我独尊」
と叫ばれたと伝えられています。
 
「唯我独尊」という言葉は一般的には、「世界でいちばん偉いのは俺だ!」と偉ぶった言葉のように使われますが、これは大変な間違いです。
 
「天上天下」とは、この大宇宙のこと。
「唯我独尊」とは、「唯、我、独り尊い」ということですが、この「我」とは、お釈迦様個人のことではなく、「我々人間」のことなのです。
ですから「天上天下 唯我独尊」とは、
「大宇宙広しといえども、我々人間にしか果たせない、たった一つの尊い目的がある」
という意味なのです。
 
どんな人でもこの尊い目的を果たすことができるから、どんな人の命も尊い、人間の命は平等であると、仏教では、教えられています。
 
こちらの記事では「天上天下 唯我独尊」についてより詳しく解説しています。

お釈迦さまの「天上天下唯我独尊」の本当の意味をご存知ですか

また、アンベードカルが仏教に改宗した10の理由に度々登場した、仏教で教えられる因果関係についてはこちらで解説しています。

因果の道理(因果応報)の本当の意味|因果応報とカルマとの関係は?

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あさだ よしあき

ブログ作成のお手伝いをしています「あさだよしあき」です。 東京大学在学中、稲盛和夫さんの本をきっかけに、仏教を学ぶようになりました。 20年以上学んできたことを、年間200回以上、仏教講座でわかりやすく伝えています。
 
   

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