蓮如上人は大器晩成型であった 43歳で法主になるまでのご苦労
蓮如上人といえば、浄土真宗を一代で、日本一の教団に成長させた人物として、有名です。
若い時から、バリバリ活躍されたのではないかと思いますが、本願寺(ほんがんじ)のトップである法主(ほっす)になられたのは、43歳の時。
人生50年の時代ですから、大器晩成型でありました。
蓮如上人は、本願寺に、応永22年(1415年)2月に、生を受けます。
その後、どのようなことがあったのでしょうか。
本願寺とは
本願寺とは、覚如上人(かくにょしょうにん)が京都・大谷に建立した寺で、本堂が三間(約6メートル)四方の小さな寺であり、天台宗(てんだいしゅう)・青蓮院(しょうれんいん)に属する末寺(本山の支配下にある寺)でした。
初めは「専修寺(せんじゅじ)」という名称を掲げましたが、「専修(せんじゅ)」は、阿弥陀仏だけに向いて念仏を称えるという意味なので、比叡山延暦寺(天台宗の本山)から反対。そのため、寺の名前は「本願寺」に改められました。
極貧の生活
その本願寺に、蓮如上人は、親鸞聖人が亡くなってから150年後、生まれます。幼名は布袋丸(ほていまる)。
布袋丸が6歳の時、母君が突如、行方を絶ち、生死すら不明に。
やがて父・存如(ぞんにょ)は、如円(にょえん)という女性を妻に迎えます。
布袋丸は、継母に冷遇されながら、一男三女の異母兄弟とともに成長していきました。
当時の本願寺は、参詣者はほとんどなく、経済的にも大変厳しい生活を余儀なくされました。
17歳で得度(僧侶になる儀式)をして「蓮如」と名乗り、27歳で結婚。
長男と三人暮らしでしたが、食事が一度の日も珍しくなく、全くない日さえあったといいます。
一杯の汁を水で薄めて三人分にするなど、粗末極まる食事でした。
当然、使用人を雇う余裕もありませんから、おしめも自分で洗われました。
読書のための灯油も満足に買えず、薪で代用したり、月夜にはそれすら節約する。
そんな極貧の生活が法主になるまで続きます。
浄土真宗再興を固く誓う
「この衰退した浄土真宗を、必ず再興してみせる」、蓮如上人は、固く誓います。
青年期の蓮如上人は、本願寺が廃った原因は、教えが説かれていないからだと見抜かれました。
それには、まず自らが正確に親鸞聖人の教えを理解しなければならない。
だが、それだけで全国に伝えられるだろうか。
一人で布教できる範囲は、限られている。
だからといって、すべての僧侶に自分と同じ勉学を期待することもできない。
ならば、正しい親鸞聖人の教えを平易な手紙で書き残せばよいと考えられました。
仏教の文章伝道は、蓮如上人が初めてなされたことです。
学問のない人が読んでも分かる文章でなければ、庶民には伝えられない。
その為には、よほど深く教えを理解しなければならないと、勉学に励まれました。
御文章の活躍
蓮如上人が法主になられた後、47歳を過ぎてから、たくさんの手紙を書かれています。
今日、御文章(ごぶんしょう)、また、御文(おふみ)と言われます。
浄土真宗の要だけをわかりやすく書かれて、二百数十通が残っています。
蓮如上人から手紙を受け取った人は、有縁の人たちにその手紙を読み聞かせました。
また、その手紙が書き写されて、百の蓮如、千の蓮如となって、日本中に広がっていったのです。
これほどわかりやすく親鸞聖人の教えを伝える御文章は、若き日の血のにじむ研鑚の結晶でありました。
蓮如上人の言行録に、以下のようにあります。
「御文」はこれ凡夫往生の鏡なり。
「御文」の上に法門あるべきように思う人あり、大いなる誤りなり。
(意訳)
「御文章」は、私たちが浄土に往く道を映し出す鏡である。
「御文章」以上の教えがあると思っている者がいるが大きな誤りである。
法主・蓮如上人の誕生
蓮如上人の父・存如(ぞんにょ)は、本願寺の七代目の法主でしたが、蓮如上人43歳の時、62歳で世を去ります。
存如の妻・如円(にょえん)は、実の子の応玄(おうげん)を法主にしようと先手を打ち、存如の葬儀では、応玄を法主代理として振る舞わせました。
そのため、親類一同、応玄の継承に反対する者はなかったといいます。
だがここに、強力に反対を唱えたのが、存如の弟・如乗(にょじょう)でした。
蓮如上人の浄土真宗の復興にかける情熱をよく知っていた如乗は、孤軍奮闘で説得を続け、ついに応玄をしりぞけ、八代目の法主は、蓮如上人が継がれることとなりました。
如乗の強い押しがなければ、法主・蓮如上人の誕生もなく、今日、正しい親鸞聖人の教えは伝わっていなかったかもしれません。
法主・蓮如上人の誕生により、浄土真宗の流れは、大きく変わることになります。
蓮如上人の数ある御文章の中でも、最も多くの人に知られているのは「白骨の章」です。
どんなことが書かれているのでしょうか。
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