親鸞聖人の主著、国宝『教行信証』
親鸞聖人の主著である『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』には親鸞聖人の教えのすべてが書かれています。
浄土真宗で最も大事にされる『教行信証』はどのようなことが書かれているのか解説します。
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(質問)親鸞聖人の『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』とは、どんな本でしょうか?
(解答)
親鸞聖人90年の教えは、すべて『教行信証』に書かれています。
親鸞聖人の主著ですから、浄土真宗の「根本聖典(こんぽんせいてん)」とか「御本典(ごほんでん)」といわれます。
教行信証は、教巻、行巻、信巻、証巻、真仏土巻、化身土巻の6巻で構成されています。
教行信証の草稿は親鸞聖人52歳ごろの成立といわれますが、その後も常に手元に置かれ、生涯をかけて加筆修正された畢生(ひっせい)の大著(たいちょ)です。
今日、親鸞聖人といえば『歎異抄(たんにしょう)』を思い浮かべる人が少なくありませんが、『歎異抄』は著者不明で、親鸞聖人がじかに書かれたものではありません。
ですから、親鸞聖人の教えを正確に知るには『教行信証』を物差しとしています。
『教行信証』を一読してだれもが驚くのは、その引用文の多さです。
『教行信証』の正式名称は『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)』です。最後に「文類(もんるい)」とありますが、「文類」とは経・論・釈の重要な文章を集めて整理したもののことです。
『教行信証』には「私釈(ししゃく)」といわれる親鸞聖人の作文は少なく、そのほとんどが経(きょう)、論(ろん)、釈(しゃく)からの引用です。
経(きょう)とは、お釈迦さまの説かれたお経。
論(ろん)とは、インドの仏教の先生が書かれたもの。
釈(しゃく)とは、中国、日本の高僧方の書物。
それらの仏教の書物から要の文を集めたもの(=文類)が『教行信証』ということですから、『教行信証』はたくさんの経、論、釈の中から親鸞聖人が大事な文章を選ばれて、集められたものです。
「親鸞さらに私(わたくし)なし」が親鸞聖人の常の仰せでした。
いかに私見(自分の考え)を交えず、正確にお釈迦さまの真意を明らかにされたかがお分かりでしょう。
(質問)『教行信証』には、どんなことが書かれていますか?
(解答)
『教行信証』は、「よろこばしきかな」で始まり、「よろこばしきかな」のお言葉で終わっています。
親鸞聖人の、書いても書いても書き尽くせない喜びがあふれているのです。
文芸評論家の亀井勝一郎(かめいかついちろう)氏も、
『教行信証』全巻には大歓喜の声が響きわたっている
と驚嘆しています。
そのほか『教行信証』を称賛する声は枚挙にいとまがありません。
親鸞聖人のお言葉には、大変な魅力、摩訶不思議な力がありますから、時代を超えて多くの人が『教行信証』に魅了されるのでしょう。
『教行信証』の冒頭の言葉は多くの人に知られています。
例えば「釣りバカ日誌」「マルサの女」「大病人」などの映画で活躍し、親鸞聖人の映画「白い道」では監督を行った故・三國連太郎氏はこう言っています。
私が一番感動するのは『教行信証』の冒頭の言葉です
その冒頭のお言葉が
難思の弘誓(なんしのぐぜい)は難度の海(なんどのうみ)を度(ど)する大船
です。
この『難思の弘誓は難度の海を度する大船』の意味がわかれば、『教行信証』で親鸞聖人が伝えたかったことのすべてを理解することができます。
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(質問)『歎異抄』も有名ですが、どういう本なのですか?
(解答)
今日仏教書の中で最も多くの人に読まれている有名な『歎異抄』は、親鸞聖人のお亡くなりになったあと、約30年たって成立したといわれています。
親鸞聖人が亡くなられてからしばらく経つと、親鸞聖人が教えられていないことを「これが親鸞聖人の教えだ」と言いふらすものが増えてきました。
それらの異説を歎いて書かれたのが歎異抄です。
著者はお弟子の唯円(ゆいねん)ともいわれますが、ハッキリしていません。
全18章のうち1章から10章までは、親鸞聖人がおっしゃったお言葉として書かれています。
それらの親鸞聖人のお言葉を物差しとして当時の異説を正そうとしたのが、11章から18章です。
たぐいまれなる名文ですが、親鸞聖人の教えをよく理解している人が読まないと大変な読み間違いをするところが多いため、蓮如上人(れんにょしょうにん)は「だれにでも読ませてはならない」と奥書に書き加えておられます。
(質問)『教行信証』よりも『正信偈』の方が身近なのですが?
(解答)
「帰命無量寿如来(きみょうむりょうじゅにょらい)」で始まる『正信偈(しょうしんげ)』は多くの人に親しまれています。
浄土真宗の人にとっては、朝夕の勤行で拝読する最も身近な仏教の本です。
『正信偈』は、独立した書物ではなく、『教行信証』行巻(ぎょうかん)の最後に書かれている文章を抜き出されたものです。1行7文字、120行の偈(げ)になっています(1行14字と数えた場合は60行)。
840字の『正信偈』は、『教行信証』6巻の内容をギュッと絞ったエキスですから、浄土真宗の教えは「正信偈」におさまっているといえます。
つまり、『正信偈』が分かれば、聖人90年の教えはすべて分かるということです。
まとめ
『教行信証』は親鸞聖人の主著で、全6巻に分かれています。
「更に親鸞、私なし」と私見を交えず真実の仏教を説かれたのが親鸞聖人ですが、『教行信証』もその内容のほとんどが経、論、釈からの引用であり、親鸞聖人がご自身の言葉で書かれた私釈の部分はわずかです。
朝晩の勤行で親しんでいる正信偈は『教行信証』の行巻の末尾に書かれてものを抜き出したもので、『教行信証』6巻の内容が収まっています。
ですから『正信偈』がすべて分かれば、『教行信証』がすべて分かるということになり、親鸞聖人の教えのすべてが分かることになります。
ではその『正信偈』にはどのようなことが教えられているのでしょうか。
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