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何が起きるか分からないこの世で幸せになる『歎異抄』に込められたメッセージ(後編)

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カテゴリー:歎異抄 タグ: 更新日:2024/02/24
 


前編はこちら

「ただ念仏のみぞまこと」って、ホント?

「ただ念仏のみぞまことにておわします」
『歎異抄』を読むと、まず目にするのが、頻出する「念仏」の2文字。
念仏とは「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」と口に称えることだろう。
そんな念仏を称えることが「まこと」とはどういうことだろうか?と分からなくなります。
 
この念仏の意味こそが、『歎異抄』理解のカギといっていいでしょう。
親鸞聖人がここで「念仏のみぞまこと」と言われているのは「本願のみぞまこと」を、言い換えられた言葉です。
本願とは、釈迦が生涯懸けて、これ一つ明らかにされた「阿弥陀仏の本願」のことですから、その本願が分からなければ『歎異抄』は正しく読めません。
 
阿弥陀仏の本願とは、何でしょうか?
阿弥陀仏とは、釈迦の師であり、大宇宙にガンジス川の砂の数ほどまします仏方の本師本仏(先生・指導者)だと、お釈迦さま自身が経典に説かれています。
「本願」とは、誓願ともいい、「誓い」「約束」のこと。
阿弥陀仏が、すべての人を相手に「必ず、絶対の幸福に救い摂る」と誓われたお約束を「阿弥陀仏の本願」といわれるのです。
 
では阿弥陀仏が救うと誓われた「絶対の幸福」とはどんな幸せなのでしょうか。
阿弥陀仏のお心は、弟子であるお釈迦さまに尋ねるしかありません。
釈迦が師である阿弥陀仏の本願(御心)を解説されたお言葉が、本願成就文といわれるものです。
このお釈迦さまの解説によらなければ、私たちは「本願」を正しく知ることができず、救われませんから親鸞聖人はこの本願成就文を、

「一実円満の真教・真宗これなり」『教行信証』信巻

と断言されています。
 
大宇宙に二つとない、唯一の真実(一実)であり、完全無欠の教え(円満)であり、真実の教えであり、浄土真宗はこれ以外にない、とまで断言されている、最も重要な釈迦の教えなのです。
その本願成就文には、弥陀の本願の救いを「即得往生 住不退転」と解説されています。
この「不退転に住する」幸せこそが絶対の幸福なのです。

不退転とは、絶対に崩れない幸せ

政治家などが、よく「不退転の決意で取り組みます」と使うように「退くことのない、何事にも屈せぬさま」を表す言葉になっていますが「不退転」は釈迦の本願成就文から出た、絶対の幸福を表す仏語と知る方は少ないでしょう。
この「不退転」とは、「正定聚不退転」のことで「正しく浄土へ往って、仏になることに定まった人たち(聚)の仲間入りをしたことです。
それは決して崩れない絶対の幸せですから「不退転」と言われるのです。
 
蓮如上人は有名な『御文章』に、その世界を「往生一定」とか「往生治定」と教えられています。
「往生」とは「立ち往生」とか「にわか雨に遭って往生した」などと言われるように「死んだこと」や「困ったこと」を世間では言いますが、仏教本来の意味は、浄土へ「往って」仏に「生まれる」こと。
「一定」「治定」とは「疑いなくハッキリしたこと」ですから「往生一定」とは、「いつ死んでも浄土往生間違いなし」とハッキリした大安心大満足の世界をいうのです。
 
今幸せでも、未来、苦しみに転落するかも、となれば、不安から逃れることはできません。
しかし、お釈迦さまが教えられた「不退転」の世界とは、この世は絶対の幸福、来世は浄土往生という、この世から未来永遠の幸せに生かされた世界なのです。
 
幸せの絶頂から、やがて転がり落ちる「有頂天」では「いつどうなるか分からない」不安が、足下から、背後から迫ってきて、心から安心できません。
一切の滅びる中に、滅びざる「まこと」の世界が、本願に誓われた「不退転」の世界です。
 
『歎異抄』は「火宅無常」の不安におののく私たちが、渇望してやまない幸せは「ただ念仏のみぞまこと」の世界であることを伝えんとした書だったのです。
 
では、どうしたら、その世界に出させていただけるのでしょうか。
親鸞聖人が、唯一の真実の教えと仰った、釈迦の本願成就文には「聞其名号」と教えられ「聞く一つ」で不退転の身・絶対の幸福に救われると明言されています。
この釈迦の教えに基づいて、親鸞聖人も蓮如上人も「仏法は聴聞に極まる」と説かれているのです。
 
「えーっ、ただ聞いているだけでいいの?」と思った方もあるかもしれませんが「真剣に」聞きなさいよと教えられた親鸞聖人のお言葉を、最後にお示ししましょう。

たとい大千世界に 
みてらん火をもすぎゆきて
仏の御名をきくひとは
ながく不退にかなうなり (浄土和讃)

たとえ、大宇宙が火の海になろうとも、そのなか仏法聞き抜く人は、必ず不滅の幸せ(不退)に輝くのだ

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あさだ よしあき

ブログ作成のお手伝いをしています「あさだよしあき」です。 東京大学在学中、稲盛和夫さんの本をきっかけに、仏教を学ぶようになりました。 20年以上学んできたことを、年間200回以上、仏教講座でわかりやすく伝えています。
 
   

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